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百人一首

白露に風の吹きしく秋の野はつらぬきとめぬ玉ぞ散りける

草の葉の上に乗って光っている露の玉に、風がしきりに吹きつける秋の野原は、まるで紐に通して留めていない真珠が、美しく散り乱れて吹き飛んでいるようではないか。
百人一首

夏の夜はまだ宵ながら明けぬるを雲のいづこに月宿るらん

とりわけ夏の夜は短いので、 まだ宵のうちだなあと思っていたら、もう明けてしまった。 月も西の空に沈むひまなどないはずだ、いったい雲のどこのあたりに宿をとっているのだろうか。
百人一首

人はいさ心も知らずふるさとは花ぞ昔の香に匂ひける

さてどうでしょうね。人の心は分からないけれど、昔なじみのこの里では、梅の花だけがかつてと同じいい香りをただよわせていますよ。
百人一首

誰をかも知る人にせむ高砂の松も昔の友ならなくに

いったい誰を昔なじみの親しい友人としようか。そんな者はどこにもいない。長寿で有名な高砂の松も、昔からの友人ではないのだから。
百人一首

ひさかたの光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ

こんなに陽の光がのどかに降り注いでいる春の日なのに、どうして桜の花は落ち着いた心がなく散っていってしまうのだろうか。
百人一首

山川に風のかけたるしがらみは流れもあへぬ紅葉なりけり

山中を流れる小川に、風が架けた美しい流れ止めの柵(しがらみ)は、流れきらずに残っていたたくさんの紅葉の葉でした。
百人一首

朝ぼらけ有明の月と見るまでに吉野の里に降れる白雪

夜がほんのりと明けて、物がほのかに見える頃、有明の月かと思うほど明るく、吉野の里に降った白雪である。
百人一首

有明のつれなく見えし別れより暁ばかり憂きものはなし

有明の月は冷ややかでつれなく見えた。冷たく薄情に思えた別れの時から、私には夜明け前の暁ほど辛くて憂鬱に感じる時はないのだ。
百人一首

心あてに折らばや折らむ初霜の置きまどはせる白菊の花

もし折るとするならば、あてずっぽうに折ってみようか。 初霜が降りて一面が真っ白になっており、見分けにくくなっている白菊の花を。
百人一首

山里は冬ぞ寂しさまさりける人目も草も枯れぬと思へば

山里は(つねに寂しいものだが、)特に冬が寂しさが強く感じられる。人の訪れが途絶え、草も枯れてしまうと思うと。