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百人一首

滝の音は絶えて久しくなりぬれど名こそ流れてなほ聞こえけれ

滝の流れ落ちる音が聞こえなくなってずいぶん経つけれど、その名声だけは世間に流れ伝わって、今でも人々の口から聞こえていることだよ。
百人一首

忘れじの行末まではかたければ今日を限りの命ともがな

「いつまでも忘れまい」というあなたの言葉が、遠い将来まで変わらないというのは難しいでしょう。だから、その言葉を聞いた今日を限りに命が尽きてしまえばいいのに。
百人一首

嘆きつつひとりぬる夜の明くるまはいかに久しきものとかは知る

あなたが来てくださらないことを嘆き哀しみながら、一人で孤独に寝ている夜が明けるまでの時間がどれだけ長いかご存じでしょうか。あなたはご存じないでしょうね。
百人一首

明けぬれば暮るるものとは知りながらなほ恨めしき朝ぼらけかな

夜が明けたらいずれ日は暮れる、(そして、あなたに逢える)とは分かっているのですが、それでもなお恨めしい(あなたと分かれる)夜明けだなあ。
百人一首

かくとだにえはやいぶきのさしも草尺も知らじな燃ゆる思ひを

こんなにも貴方を思っていることを、口に出して言うことができるでしょうか。ましてや伊吹山の(燃えるような)さしも草ではないけれども、私の想いがそれほど(燃えるように映るさしも草ほど)までに激しく燃えていると、あなたはご存じないでしょう。
百人一首

君がため惜しからざりし命さえ長くもがなと思ひけるかな

あなたに会うためなら惜しいとは思わなかった私の命ですが、こうしてあなたと会うことができた今は、いつまでも生きていたいと思っています。
百人一首

みかきもり衛士のたく火の夜はもえ昼は消えつつ物をこそ思へ

宮中の御門を守る御垣守(みかきもり)である衛士(えじ)の燃やす篝火が、夜は燃えて昼は消えているように、私の心も夜は恋の炎に身を焦がし、昼は消えいるように物思いにふけり、毎日のように思いわずらっていることだ。
百人一首

風をいたみ岩うつ波のおのれのみ砕けてものを思ふころかな

風が激しく吹き、岩に打ち寄せる波が自分だけ砕けて散るように、私の心は千々に砕けてしまって、どうしてよいのか思い悩むこの頃なのです。
百人一首

八重葎しげれる宿のさびしきに人こそ見えね秋は来にけり

幾重にもつる草が生い茂っている荒れ寂れた宿は寂しく、人は誰も訪ねてこないが、それでも秋はやってくるのだなあ。
百人一首

由良の門を渡る舟人かぢを絶え行方も知らぬ恋の道かな

由良川の(流れが速い)河口の瀬戸を渡る船頭が、櫂がなくなって行方もしらず漂うように、どうなるかわからない恋の道であることよ。