あしひきの 山鳥の尾の しだり尾の 長々し夜を ひとりかも寝む
柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ)
百人一首の3番目の歌です。
枕詞や序詞の使用や、「山鳥の尾のしだり尾の」というふうに「尾」が繰り返されて、
歌にリズムが感じられるような表現が、とても印象的で美しい歌です。
語句
*あしひきの・・・「山」の枕詞。
*山鳥・・・キジ科の鳥で雄の尾が非常に長いと言われている。そのため「長いこと」を表す時に使われる。また、夜になると雄と雌が別れて、それぞれで一人寝をする鳥でもある。
*しだり尾・・・垂れ下がっている尾。また、次の「長々し」の序詞(じょことば)。
*かも寝む・・・
か・・・疑問の係助詞で「む」にかかっている。
も・・・強意の係助詞。
む・・・推量の助動詞の連体形。
歌意
雄と雌とが別々に寝るという山鳥の長く垂れ下がった尾のように長い夜を、山鳥と同じようにひとりで寝ることになるのだろうか、さみしいことだなあ。
作者
柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ)
持統天皇の頃の宮廷歌人で、三十六歌仙の一人。その歌風は雄大・重厚で、枕詞や序詞などを多用することが特徴。また、長歌の様式を完成させた人物でもあり、のちに「歌聖」ともいわれる。下級官吏で710年ごろに石見国(現在の島根県益田市)で死んだといわれている。万葉集の代表的歌人の一人で、長歌20首、短歌75首が収められている。
現在の人麻呂の肖像画の原画は、平安時代後期に人麻呂を敬愛していた藤原兼房が、夢の中に見た筆と紙を持った姿の人麻呂をすぐに書かせたものであるといわれている。
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