筑波嶺(つくばね)の 峰(みね)より落つる みなの川 恋ぞ積もりて 淵(ふち)となりぬる
陽成院(ようぜいいん)
百人一首の13番目の歌です。
長年の恋心を詠んだ歌。
語句
*筑波嶺・・・「筑波」は常陸国(現在の茨城県)の筑波山。
山頂が男体山と女体山の2つに分かれ、万葉の昔からよく歌に詠まれた。
万葉の頃、春と秋に男女が集まって神を祀り、求愛の歌を歌いながら楽しむ「歌垣(うたがき)」が行われた。
*みなの川・・・「男女川」とも書く。男体山、女体山の峰から流れ出る川。桜川に合流し、霞ヶ浦に流れ込む。男体山と女体山からの流れがいっしょになった川であるため、男女の仲が親密なことの象徴。
*淵(ふち)・・・水が深くよどんだ所。これに対して浅い水たまりを「瀬」という。ここでは恋心が積もってゆく状態を表している。
歌意
筑波山の峰から流れ落ちるみなの川のように、私の恋も長年積もりに積もって、深い淵のようになってしまったことだ。
作者
陽成院(ようぜいいん)
(868-949)第57代天皇(在位874-884)。清和天皇の第一皇子。母は藤原基経の妹で入内前に在原業平と恋愛関係にあった藤原高子(ふじわらのたかいこ)。10歳で即位したが、病のため17歳で譲位。
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