ちはやぶる 神代(かみよ)もきかず 龍田川(たつたがわ) から紅(くれない)に水くくるとは
在原業平朝臣(ありわらのなりひらあそん)
百人一首の17番目の歌です。
語句
*ちはやぶる・・・「神」や「宇治」にかかる枕詞。「荒々しい、たけだけしい」の意。
*神代もきかず・・・「神代」は、神々が国を治めた時代。「太古の昔」の意。「神々の時代でも聞いたことがない」の意。
*龍田川・・・奈良県生駒郡斑鳩町竜田にある竜田山のほとりを流れる川。代表的な歌枕のひとつ。
*から紅・・・あざやかな紅色。「から」は、「韓」、「唐土(もろこし)」。当時、韓や唐土は先進国であり、優れた品が日本に渡ってきていた。
*くくる・・・括り染め(布を糸でくくって白い部分を残す染め方)にすること。
*水くくる・・・「竜田川が川の水を括り染めにしてしまうとは」で終わり、倒置法になっている。「竜田川が川の水を括り染めにしてしまうとは、神代でも聞いたことがない」の意。
歌意
神々が国を治めた太古の昔である神代でさえも、聞いたことがない。龍田川が(一面に紅葉が浮いて)あざやかな紅色に、水をくくり染めにしているとは。
作者
在原業平朝臣(ありわらのなりひらあそん)
平城(へいぜい)天皇皇子阿保(あぼ)親王の五男。
百人一首の16番に歌がある、中納言行平(ゆきひら)の異母弟。
右近衛権中将(うこんえごんのちゅうじょう)にまで出世し、在原氏の五男の意で「在五中将」や「在中将」と呼ばれた。
伊勢物語の主人公とされ、小野小町のように「伝説の美男で風流才子」と言われた。美貌(びぼう)の皇孫でありながら自由奔放な情熱に生き、官僚の教養としての漢文学よりも
私的な恋情などを詠む和歌に秀でた人物。
六歌仙の一人。
「六歌仙」とは、平安時代初めの和歌の名手たちを6人選んだもので、在原業平、僧正遷昭、喜撰法師、大友黒主、文屋康秀、小野小町のことを言う。
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