住の江の岸による波よるさへや夢の通ひぢ人目よくらむ

百人一首

住の江(すみのえ)の 岸による波 よるさへや 夢の通ひぢ 人目よくらむ
藤原敏行朝臣(ふじわらのとしゆきあそん)

百人一首の18番目の歌です。

語句

*住の江・・・摂津国住吉(せっつのくにすみよし)(現在の大阪府大阪市住吉区)の海岸。
*岸による波・・・「岸に寄せる波」の意。次の「よる(夜)」の序詞。
*よるさへや・・・「さへ」は「〜までも」の意の副助詞。「(昼間ならともかく)夜までも」の意。
*夢の通ひぢ・・・夢の中の道、夢の中で恋人に会うために通う道、夢の中で行き来すること
*人目よくらむ・・・「人目(ひとめ)」は「他人の見る目」の意。
「よく」は「避ける」という意味の下二段動詞の終止形。
「らむ」は原因や理由を推量する助動詞の連体形。
「夜さへや」の係助詞「や」の結びとなる。
「他人の目を避けてしまうのだろう」の意。

歌意

住ノ江の海岸に打ち寄せる波、その「よる」という言葉のように、昼間ばかりか、人目を避ける必要のない夜でさえも、あなたは夢の中の道を通って会いにきてはくださらない。

作者

藤原敏行朝臣(ふじわらのとしゆきあそん)
生年不詳〜901年。
平安時代前期の歌人。
三十六歌仙の一人。
藤原南家の陸奥出羽按察使富士麻呂の長子。
母は紀名虎(きのなとら)の女。
妻は紀有常の娘で在原業平の妻の姉妹。
若くして書家としても知られ、小野道風(おののとうふう)は「空海と並ぶ書家と褒めた」と伝えられている。



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