吹くからに 秋の草木(くさき)の しをるれば むべ山風を あらしといふらむ
文屋康秀(ふんやのやすひで)
百人一首の22番目の歌です。
語句
*吹くからに・・・「からに」は複合の接続助詞で、「~するとすぐに」の意。「吹くとすぐぐに」
*しをるれば・・・「しをる」は「勢いがなくなる、しおれる」の意。その已然形に原因・理由を表す接続助詞「ば」が続き、「しおれるので」の意。
*むべ・・・「なるほど」の意。「うべ」とも。平安時代いこうには、「むべ」と発音した。
*あらしというらむ・・・「荒らし」と「嵐」の掛詞。また「山」と「風」を組み合わせると「嵐」の文字になる。
歌意
一度吹くとすぐに秋の草木がしおれるので、なるほど山からの風を嵐(荒らし)と言うのだろう。
作者
文屋康秀(ふんやのやすひで)
生没年不。9世紀頃の平安初期の歌人で、別称・文琳(ぶんりん)と言う。
形部中判事、三河掾(みかわのじょう)、縫殿助(ぬいどののすけ)など官職は低かったが、六歌仙の一人で歌人としては有名であった。
小野小町と親密であったが、三河掾として同国に赴任する際に小野小町を誘ったという。
それに対し小町は
「わびぬれば 身をうき草の 根を絶えて 誘ふ水あらば いなむとぞ思ふ」
(=こんなに落ちぶれて、我が身がいやになったのですから、根なし草のように、誘いの水さえあれば、どこにでも流れてお供しようと思います)
と歌を詠んで返事をしたという。
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