山里は冬ぞ寂しさまさりける人目も草も枯れぬと思へば

百人一首

山里(やまざと)は 冬ぞ寂(さび)しさ まさりける 人目も草も 枯れぬと思へば
源宗于朝臣(みなもとのむねゆきあそん)

百人一首の28番目の歌です。

語句

*山里は・・・「山里」は、人里はなれた村里・またはそこにある家のこと。「は」は、区別を表す係助詞。都ではなく山里は、の意。
*冬ぞ寂しさ まさりける・・・「冬」は陰暦における「十月」「十一月」「十二月」。「ぞ」は強意の係助詞。「寂しさ」は「孤独だ」とか「寒々として寂しい」の意。「まさり」は動詞「まさる」の連用形で「増す」「つのる」の意。「ける」は、詠嘆の助動詞の連体形で「ぞ」の結び。「季節の中で冬は格別にさびしさが増す」。
*人目も草も・・・「人目」は「人、人の訪れ」。「人も草もすべての生き物が」の意。
*かれぬと思へば・・・「かれ」は「離れ」と「枯れ」の掛詞。「離る」は、「人が訪問しなくなる」。「枯れ」は、「草木が枯れる」の二重の意味。「思へば」は倒置法で、最初の「山里~」に続く。

歌意

山里は(つねに寂しいものだが、)特に冬が寂しさが強く感じられる。人の訪れが途絶え、草も枯れてしまうと思うと。

作者

源宗于朝臣(みなもとのむねゆきあそん。9世紀末~939)
光孝天皇の孫で是忠(これただ)親王の息子。
894年に臣籍に下って源姓を賜る。
三十六歌仙の一人で、平安時代前期の貴族であり、歌人としても活躍し、紀貫之などと仲が良かった。
しかし、官位に恵まれずに正四位下・右京大夫にとどまり、丹波・摂津・信濃などの権守となっている。「大和物語」には自分の不遇を嘆いた歌を残している。

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