君がため惜しからざりし命さえ長くもがなと思ひけるかな

百人一首

君がため 惜(を)しからざりし 命さえ 長くもがなと 思ひけるかな
藤原義孝(ふじわらのよしたか)

百人一首の50番目の歌です。

語句

*君がため・・・「あなたのため」の意。
ここでは、あなたと「逢う」ためにの意。
*惜しからざりし・・・捨てても「惜しいとは思わなかった」の意。
「ざり」は打消しの助動詞「ず」の連用形。
「し」は過去の助動詞「き」の連体形。
*命さへ・・・「さへ」は添加の副助詞。「命までも」の意。
*長くもがな・・・「長く」形は容詞(ク活用)「ながし(=長い)」の連用形。
「もがな」は終助詞で「…であったらなあ。…であるといいなあ。…てほしい。」の意。
「と」は格助詞で「…と」
*思ひけるかな・・・ハ行四段活用動詞「おもふ(=思う・願う・心に決める)」の連用形。
過去の助動詞「けり」の連体形。
「かな」は詠嘆の終助詞。

歌意

あなたに会うためなら惜しいとは思わなかった私の命ですが、こうしてあなたと会うことができた今は、いつまでも生きていたいと思っています。

作者

藤原義孝(ふじわらのよしたか)
954~974
謙徳公伊尹(けんとくこうこれただ)の三男。
18歳で正五位下・右少将になる。
「末の世にもさるべき人や出でおはしましがたからむ(今後もこのような人は現れないだろう)」と言われるほどの美男で人柄も良かった。
しかし痘瘡(天然痘)にかかってわずか21歳の若さで死去。

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