あらざらむこの世のほかの思ひ出に今ひとたびの逢うこともがな

百人一首

あらざらむ この世のほかの 思ひ出に 今ひとたびの 逢うこともがな
和泉式部(いずみしきぶ)

百人一首の56番目の歌です。

語句

*あらざらむ・・・「あら」は動詞「あり」の未然形。「生きている」の意。
「ざら」は打消の助動詞「ざり」の未然形。
「む」は推量の助動詞「む」の連体形。
全体で「生きていないであろう」の意味。
*この世のほかの・・・「この世」とは「現世」の。意
「この世の外」は現世の外の世界、すなわち「あの世、死後の世界」の意。
*思ひ出に・・・「に」は、目的を表す格助詞で、「~のために」の意。
「来世での思い出になるように」の意。
*今ひとたび・・・「今」は、「もう」の意味を表す副詞。「もう一度」の意。
「の」は、連体修飾格の格助詞。
*逢ふこともがな・・・「逢ふ」は、男女が一夜を過ごすこと。
「もがな」は願望の終助詞。「~であったらなあ」。実現が難しい願望。

歌意

わたしはもうすぐ死んでしまうでしょう。あの世への思い出として、もう一度だけあなたにお会いしたいものです。

作者

和泉式部(いずみのしきぶ)
生没年未詳。
1000年頃の人で、越前守大江雅致(おおえまさむね)の娘。
最初の夫が和泉守・橘道貞(たちばなのみちさだ)だったので、和泉式部の名前で呼ばれるようなった。
このとき生んだ娘が、百人一首にも登場する小式部内侍。
自分の恋愛遍歴を記した「和泉式部日記」はこの時代を代表する日記文学である。
和泉式部は恋多き女性で、道貞と数年後破局した後、為尊(ためたか)親王、その弟・敦道(あつみち)親王と結ばれ、さらに2人の死後、一条天皇の中宮彰子に仕え、藤原保昌(やすまさ)とも結婚した。
「和泉式部日記」は、敦道親王との恋愛を綴ったもの。
晩年は消息不明。
中古三十六歌仙、女房三十六歌仙の一人。

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