めぐり逢ひて見しやそれともわかぬ間に雲がくれにし夜半の月かな

百人一首

めぐり逢ひて 見しやそれとも わかぬ間に 雲がくれにし 夜半の月かな
紫式部(むらさきしきぶ)

百人一首の57番目の歌です。

語句

*めぐり逢ひて・・・「めぐりあひ」の対象は表向きは「月」だが、新古今集の詞書から実際は幼馴染の友人(女性)である。
月に託して、幼馴染と巡り逢ったことを表現している。
「月」と「めぐる」は「縁語」。
*見しやそれとも・・・「し」は、過去の助動詞「き」の連体形。
「や」は、疑問の係助詞で、結びは省略されている。
「と」は、引用の格助詞。
「も」は、強意の係助詞。
「見たのが『それ』かどうかも」の意。
一見『それ』は月のことであるが、ここでは友達のことを指す。
*わかぬ間に・・・「わか」は、カ行四段の動詞「わく(分く・別く)」の未然形。
「ぬ」は、打消の助動詞「ず」の連体形。
「に」は、時を表す格助詞。
「見分けがつかないうちに」の意。
*雲隠れにし・・・「に」は、完了の助動詞「ぬ」の連用形。「し」は、過去の助動詞「き」の連体形。月が雲に隠れてしまったこと。ここでは幼馴染が見えなくなってしまったことも表す。
*夜半の月かな・・・「夜半(よは)」は夜中・夜更けの意。
最後の「かな」は、詠嘆の終助詞だが、「新古今集」や百人一首の古い写本には、「月影」とある。

歌意

せっかく久しぶりにめぐり逢えたのに、あなたなのかどうかも分からないほどの短い時間であっという間に帰ってしまわれました。まるで、雲隠れしてしまった夜中の月のようでしたね。

作者

紫式部(むらさきしきぶ)
(生没年不詳:970年から978年の間に生まれ、1019年頃に亡くなったなど諸説あり)
文章生(当時の文学研究者)出身の藤原為時の娘。
大弐三位の母。
「中古三十六歌仙」および「女房三十六歌仙」の一人。
夫に先立たれた後、一条天皇の中宮彰子に出仕。
その傍ら「源氏物語」五十四帖や「紫式部日記」を記した。

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