百人一首

みかきもり衛士のたく火の夜はもえ昼は消えつつ物をこそ思へ

宮中の御門を守る御垣守(みかきもり)である衛士(えじ)の燃やす篝火が、夜は燃えて昼は消えているように、私の心も夜は恋の炎に身を焦がし、昼は消えいるように物思いにふけり、毎日のように思いわずらっていることだ。
随筆

天王山の水底

雨がたくさん降った次の日、私は彼女と一緒に天王山に登った。天王山は京都府南部に位置し、南北朝や応仁の乱では戦略上の要地となり、また織田信長を討った明智光秀とその仇討ちを果たそうとする羽柴秀吉が戦った山崎の戦いなど、いわゆる「天下の分け目」の...
随筆

島本のエクリチュール

久しぶりに訪れた島本町、私の育った町である。ここへは5歳の時に引っ越ししてきた。生まれたのは福知山であるが、なにぶん小さかったために何も覚えていない。かろうじて覚えているのは、自分の背丈ほどに雪が積もっていたことぐらいだ。背丈と言っても4歳...
百人一首

風をいたみ岩うつ波のおのれのみ砕けてものを思ふころかな

風が激しく吹き、岩に打ち寄せる波が自分だけ砕けて散るように、私の心は千々に砕けてしまって、どうしてよいのか思い悩むこの頃なのです。
随筆

猫背の思い出

朝起きて一番にベランダに出た。先週よりも寒さが和らいでいたので薄着のまま、所狭しと並んでいる植物たちを一目見た。一目見てから次に遠くに目をやると、南の方には朝日に照らされた街が広がり、西の丘には竹の林が風に吹かれてゆっくりと動いている。そし...
百人一首

八重葎しげれる宿のさびしきに人こそ見えね秋は来にけり

幾重にもつる草が生い茂っている荒れ寂れた宿は寂しく、人は誰も訪ねてこないが、それでも秋はやってくるのだなあ。
English

モーニングページという種

モーニングページという種  私の子供が小さかった頃、自分の不満を伝えることができずに泣いたり、物を投げたりして、気持ちを表現できないことに苛立つことがよくありました。周囲の者としては、子供が不満を持っていることは分かりましたが、何に対してど...
百人一首

由良の門を渡る舟人かぢを絶え行方も知らぬ恋の道かな

由良川の(流れが速い)河口の瀬戸を渡る船頭が、櫂がなくなって行方もしらず漂うように、どうなるかわからない恋の道であることよ。
随筆

一枚の絵

植物を集め始めたのは、令和3年の4月でした。それからたくさんの植物を買い、今では200を超える植物が、ベランダや部屋の中に溢れています。その時々で好きになるものは変わっていますが、最近の傾向から、私の理想の植物像、なぜか追い求めてしまう植物...
百人一首

あはれともいふべき人は思ほえで身のいたづらになりぬべきかな

私のことを哀れだといってくれるはずの人は他には誰も思い浮かばないまま、きっと私はむなしく死んでしまうのだろうな。