天の原ふりさけ見れば春日なる三笠の山に出でし月かも

百人一首


天の原(あまのはら) ふりさけ見れば 春日(かすが)なる 三笠(みかさ)の山に 出でし月かも

安倍仲麿 (あべの なかまろ)

百人一首の7番目の歌です。
遣唐使として唐に渡った作者が、日本を懐かしんで詠んだ歌です。

語句

*天の原・・・大空。
*ふりさけ見れば・・・「仰いで見ると」「遠くを眺めると」の意。「ふりさけ見る」の已然形に確定条件を表す接続助詞「ば」。
*春日なる・・・「春日にある」の意。春日とは、現在の奈良県奈良市。
*三笠の山・・・春日大社後方、春日山原始林の手前にある山。春日大社は神山である御蓋山(みかさやま)(春日山)の麓に、奈良時代の神護景雲2年(768)、称徳天皇の勅命により武甕槌命(たけみかづちのみこと)、経津主命(ふつぬしのみこと)、天児屋根命(あめのこやねにみこと)、比売神(ひめがみ)の御本殿が造営された神社。遣唐使の出発に際しては、春日神社で旅の無事を祈ったといわれている。

歌意

大空を仰いで見ると、奈良の春日にある三笠山に出ていた月と同じ月が見えているなあ。

作者

安倍仲麿(あべのなかまろ)
698~770。19歳の頃、遣唐使として中国の唐へ渡った留学生の一人。唐の大学に学び、科挙に合格、唐朝の諸官を歴任した。とりわけ玄宗皇帝に気に入られ、中国名「朝衡(ちょうこう)」として50年以上仕えた。一度帰国を許されたが、途中で船が難破して引き返し、結局帰れぬまま唐の長安で73歳で没す。盛唐の大詩人である李白や王維とも 親交があった。


コメント

タイトルとURLをコピーしました