ひさかたの光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ

百人一首

ひさかたの 光のどけき 春の日に しづ心なく 花の散るらむ
紀友則(きのとものり)

百人一首の33番目の歌です。

語句

*ひさかたの・・・「天・日・月・空・雲・雨」などにかかる枕詞。
「(日の)光」にかかる。
*光のどけき・・・「日の光が穏やか」の意。
「のどけき」は、形容詞「のどけし」の連体形。
「のどかだ・穏やかだ」の意。
*しづ心なく・・・「静心(しづごころ)」は「落ち着いた心」の意味なので、「落ち着いた心がなく」の意。
「静心なく」で、「散るらむ」を修飾する連用修飾格となり、「落ち着いた心がなく」「散るのだろうか」を意味する。散る桜の花を擬人化している。
*花の散るらむ・・・「花」は桜。古文で「花」といえば桜の花をさすことが多いが、「万葉集」や「古今和歌集」春歌上では多く梅の花をさす。
「らむ」は目に見えるところでの推量の助動詞で、「どうして~だろう」の意。「しづ心なく」を受けて「どうして、心静めずに桜は散っているのだろうか」の意。

歌意

こんなに陽の光がのどかに降り注いでいる春の日なのに、どうして桜の花は落ち着いた心がなく散っていってしまうのだろうか。

作者

紀友則(きのとものり)
(?~905)平安時代前期の官人。
「土佐日記」の作者で百人一首にも歌がある紀貫之(きのつらゆき)のいとこ。
宮内権少輔有友(ごんのしょうありとも)の息子。
40歳くらいまで無官だったが、その後土佐掾(とさのじょう)、大内記(だいないき)に昇進。
「古今集」撰者の一人であったものの、「古今集」が完成する前に亡くなっている。
三十六歌仙の一人。

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