たち別れいなばの山の峰に生ふるまつとし聞かば今帰り来む

百人一首

たち別れ いなばの山の 峰に生(お)ふる まつとし聞かば 今帰り来(こ)む
中納言行平(ちゅうなごんゆきひら)

百人一首の16番目の歌です。
別れをおしむ歌。

語句

*たち別れ・・・「たち」は強調の接頭語。行平は斉衡(さいこう)2(855)年、因幡国(現在の鳥取県)の守となる。赴任のために京都の人々と別れるのである。
*いなばのやま・・・因幡の国庁近くにある稲羽山。「住なば」(行ってしまったなら)と掛詞になっている。
*まつとし聞かば・・・「まつ」は「松」と「待つ」の掛詞。「し」は、強意の副助詞。「聞かば」は、仮定条件を表す。
*帰りこむ・・・「今」は「すぐに」を意味。「む」は意志の助動詞。「すぐに帰ってくるよ」

歌意

お別れして因幡の国に行きますが、因幡の稲羽山の峰に生えている松の木のように、あなたが待っていると聞いたならば、すぐに帰ってこよう。

作者

中納言行平(ちゅうなごんゆきひら)
平城(へいぜい)天皇の皇子・阿保(あぼ)親王の子で、業平の異母兄。文徳天皇の御代の850年ごろ、過失をおかして一時期須磨に流される。
在原業平(ありわらのなりひら)は弟。
正三位(しょうさんみ)中納言(ちゅうなごん)になり、在納言と呼ばれる。斉衡(さいこう)2年(855)に因幡守に任命され、因幡の国(鳥取県)へ行きました。

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