誰をかも知る人にせむ高砂の松も昔の友ならなくに

百人一首

誰(たれ)をかも 知る人にせむ 高砂(たかさご)の 松も昔の 友ならなくに
藤原興風(ふじわらのおきかぜ)

百人一首の34番目の歌です。

語句

*誰をかも・・・「知る人にせむ」の「せむ」に掛かる連用修飾語。
「誰をまあ、いったい……だろうか」の意。
「か」は疑問の係助詞。
「も」は強い感情を込めて意味を強める係助詞。
*しる人にせむ・・・「しる人」は「自分の良き理解者、親しい友達」の意。
「に」は動作の結果を表す格助詞。
「む」は意思を表す助動詞。
「親しい友達にしよう」の意。
*高砂の松・・・「高砂」は播磨国加古郡(兵庫県高砂市)の地名。
「住吉の松」と並び松の名所である。
「松」は長寿の象徴であり、ここでは歌枕。
*昔の友・・・昔からの友達
*ならなくに・・・「なら」は断定の助動詞「なり」の未然形。「〜である」の意。
「な」は奈良時代以前に用いられた打消の助動詞「ず」の未然形。
「く」は接尾語で、「な」を体言化し、「なく」で「…ないこと」という意。
「に」は接続助詞で「…のに」の意。

歌意

いったい誰を昔なじみの親しい友人としようか。そんな者はどこにもいない。長寿で有名な高砂の松も、昔からの友人ではないのだから。

作者

藤原興風(ふじわらのおきかぜ)
生没年不詳。9~10世紀頃。
平安前期の官人であり、歌人でもあった。
藤原道成の子供で「古今集」選者の紀貫之らと同時代である。
下総権大掾(しもうさのごんだいじょう)になり、従五位下の位を授けられた。
三十六歌仙の一人で、勅撰和歌集に38首入集している他、家集として「興風集」がある。
管絃にも優れていたという。

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