恋すてふ我名はまだき立ちにけり人知れずこそ思ひそめしか

百人一首

恋すてふ 我名はまだき 立ちにけり 人知れずこそ 思ひそめしか
壬生忠見(みぶのただみ)

百人一首の41番目の歌です。

語句

*恋すてふ・・・「てふ」は「といふ」がつづまった形で、「チョウ」と発音する。「恋をしている」の意。
*わが名はまだき・・・「名」は「世間への聞え、噂や評判」の意。
「まだき」は副詞で、「早くも、今から、時も至らないのに、早早と」の意。
*立ちにけり・・・「立ち」は動詞「立つ」の連用形。
「に」は完了の助動詞「ぬ」連用形。
「けり」は過去の助動詞「けり」終止形。
*人知れず・・・忍ぶ恋を表す恋歌の慣用語句。
「人」は、恋する相手の場合が多いが、ここは第三者。
「知る」は、下二段活用で、「知られる」の意。
*こそ思ひそめしか・・・「こそ」は強意の係助詞。
「そめ」は「初め」。「恋はまだはじまったばかり」の意。
「しか」は過去の助動詞「き」の已然形。係助詞「こそ」の下に已然形が続いているので、「…だけれども」という逆接の意。

歌意

私が恋をしているという評判は、早くも広まってしまった。
誰にも知られないように、心ひそかに恋をしはじめたばかりだったのに。

作者

壬生忠見(みぶのただみ。生没年未詳、10世紀半ば)
百人一首三十番歌の壬生忠岑(みぶのただみね)の子。
平安時代に栄華を誇った村上天皇の時代に活躍した歌人。
御厨子所(みずしどころ・定外膳部)で働き、後に摂津大目(だいさかん)となる。
三十六歌仙の一人。

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