記事は令和2年7月1日に更新されました。
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こんにちは
杉の木教室です。
この記事では、現役の神主である僕が
神社の境内にあるものを
一般的な解説と
僕自身の意見もくわえて
ご紹介します。
清らかな森に囲まれて、鳥や虫たちの鳴き声が聞こえてくる神社。
穏やかな気持ちになります。
そこには、様々な施設があり、
その一つ一つに神様への真心が込められています。
僕たちの先人が
心をこめて神様をお祀りするなかで、形づくられてきた境内の施設。
ひとつずつ丁寧に見ていきましょう。
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鳥居
神社に行ってまず目を引くのが、鳥居です。
鳥居を見ると、「神社に来たな〜」という気持ちになります。
これは神社のいわゆる「門」であり、
鳥居よりさきは「神の鎮まる神聖な場所」であることを表します。
元来は、「鳥が居やすい」、「鳥がいる場所」や
「通り入る」などの意味だったそうですが、
残念ながら本当のことはわからないそうです。
形や材質、設置されている鳥居の数は神社によって様々です。
伏見稲荷大社の千本鳥居は有名で、
たくさんの鳥居がトンネルのように連なっています。
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僕の好きな鳥居は、黒木鳥居。
木の皮がついたままの鳥居で、
もっとも原始的な形式と言われています。
木の皮のなんとも言えない雰囲気が神聖に感じられて、
いつまでも見ていたくなります。
天皇陛下が代わられたときに行う
「大嘗祭(だいじょうさい)」では、
この黒木鳥居が作られます。
現在の天皇陛下の大嘗宮の一般公開に行って黒木鳥居を見た時は、
感動して見とれてしまいました。
また京都の野宮神社には、常設の黒木鳥居があります。
木が腐らないように加工がしてあるので、
少し雰囲気は違いますが立派な黒木鳥居です。
手水舎
「てみずしゃ、ちょうずや」などと読まれます。
一般的には、参道や社殿の脇に立てられていて、
手を洗い、口をゆすぐところです。
きれいな水で手を洗うと気持ちがあらたまり、
「よし、お参りしよう。」という気持ちが湧いてきます。
神様をお参りするときには、心身ともに清らかにしてからお参りをするのが、
古くからの習わしです。
身を清める方法には、
禊(みそぎ)と祓(はらえ)がありますが、
手水は、禊を簡略化したものです。
本来の禊は、川や海に入り、身を清めます。
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禊に関しては、
神主もなかなか頻繁に川や海で禊をすることはありません。
神社によって違いますが、
普段は神社にある潔斎所(けっさいしょ)という、
いわゆるお風呂で禊をします。
川や海での禊には作法があり、
船をこぐような動きをしながら、
おおきな声で「えいさっ」などの掛け声をかけます。
最初は恥ずかしく感じましたが、
やっているうちに集中していくのがわかります。
冬に禊をする場合には、
寒くて恥ずかしいなどと感じている余裕もなくなってきます。
禊をすると、僕の場合、
感覚が研ぎ澄まされるのを感じます。
心が静かになって、
「今」に集中することができるようになるのです。
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狛犬
参道や本殿の前でよく見かけられるのが、狛犬(こまいぬ)です。
左右一対になっていて、邪気をはらって、ご神前をお守りしています。
犬と言いますが、実際は獅子の形をしていて、
起源は意外にもスフィンクスだと言われています。
シルクロードをとおって中国から朝鮮半島の高麗(こま)をへて、
日本に入ってきたので、
「外来の犬」という意味で「高麗犬(こまいぬ)」と言われるようなりました。
本殿 拝殿 幣殿
神社のメインとなる建物が、本殿(ほんでん)です。
ここには神様がいらっしゃいます。
その手前には拝殿(はいでん)といって、
神様をお参りするための建物があります。
本殿と拝殿の間に、
神様にお供え物をするための幣殿(へいでん)がある神社もあります。
これらは、つながっていたり、独立していたり、
あるいは本殿や拝殿だけのところもあったりなど、
神社によって異なります。
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多くの神社にはかならず本殿(ほんでん)がありますが、
奈良県の桜井市にある大神神社(おおみわじんじゃ)には、
本殿がありません。
これは、三輪山(みわやま)という山自体が、
神様、神体山(しんたいざん)と考えられているためです。
大神神社には立派な建物がありますが、
あれは拝殿、つまり神様をお参りするための建物で、
神様は建物にではなく、
山に宿られているのです。
参道
神様をお参りするための道のことを参道(さんどう)と言います。
狭義では、鳥居の内側の境内の道を表しますが、
広義では、街道や人通りの多いところから神社に至るまでを参道と言います。
ここを通る間に、気持ちを鎮め、
神様にお参りするための心の準備をします。
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表参道(おもてさんどう)とはメインの参道のことで、
じつは、東京の表参道は、明治神宮をお参りするため参道のことなのです。
伊勢神宮の鳥居前にある
おかげ横丁も
広義の意味での参道と考えてもいいでしょう。
人が集まる神社の周りには
自然とこのような賑わいが生まれます。
まとめ
神社の境内には様々な施設があり
その一つ一つに意味がありました。
それらの意味を理解することで、単に神社に参拝するよりも
もっと深い体験をすることができます。
神社の解剖図鑑
こちらの本などを片手に神社参拝をすると
単に参拝するより時間を有効に使うことができます。
施設だけでなく、参拝する神社の祭神や歴史についても
情報を集めることによって、
あなたの参拝は意義深いものとなって、
神様との縁をかたく結んでくれます。
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