新築の家が完成した際に行うのが、竣工祭(しゅんこうさい)です。
地鎮祭で工事の安全を祈願し、竣工祭では、そのことに対する感謝を申し述べ、
家の安全、家族の幸せを祈願する神事です。
人の心の中に生まれた思いは、
0.2秒ほどで消えて行くそうです。
将来への決心や、周囲への感謝も、
こんなに早く消えてしまいます。
これでは、
自分が思い描いている結果が出るわけがないですね。
いい思いが心の中に生まれたら、
しっかりと行動にうつして消えないものとし、
自分が思い描く将来を実現していく。
神事というのは、幸せに生きていくための、
古くから伝わる知恵の一つです。
この記事では、
・竣工祭の起源
・特徴
・式次第
・意義
について解説します。
竣工祭とは
起源
古くは、「新殿祭(しんでんさい)」や「室祝(むろほぎ)」などと呼ばれていました。
新築工事が神様のおかげで無事に終わったことを報告し、感謝し祝い、これからの幸せを祈願する神事です。
宮中の神事に「大殿祭(おおとのほがい)」というものがあります。
宮殿に災害がないように、また移転などの際に行われた神事です。
これが一般にも普及したものだと考えられます。
祭神
竣工祭では、どのような神様にお祈りを捧げるのかというと、
・屋船久久能遅命(やふねくくのちのみこと) 木の霊神
・屋船豊宇気姫命(やふねとようけひめのみこと) 稲の霊神
2柱の神様です。
一般に、家にやどられる神様と言われています。
他にも
・手置帆負神(たおきほおいのかみ)
・彦狭知神(ひこさしりのかみ)
なども、お祀りされることがあります。
一般に、大工の神様と言われています。
5つの特徴
竣工祭には、地鎮祭と比べると5つの特徴があります。
神籬を設けない
地鎮祭の祭は「神籬(ひもろぎ)」という神様にお宿りいただく榊の枝を用意しますが、竣工祭ではこれを設けません。
理由は、完成した建物自体を神籬と考えるからです。
場合によっては、神籬を設けることもあります。
御富伎玉
建物の四隅に御富伎玉(みほぎだま)をかけます。
御富伎玉とは、紐に玉を通したもので、神様へのお供え物です。
かける方角によって、玉の色が違います。
・青玉 東北
・赤玉 東南
・白玉 西南
・黄玉 西北
一般には省略することがあります。
散供
建物の四隅に散供します。
散供とは、米、切麻(きりぬさ)、酒、塩などを撒いてお供えすることです。
切麻とは、半紙を細かく切ったものと、麻を混ぜたもの。
お祓いの道具です。
神饌をお供えしない
地鎮祭では、祭壇を組んで、そこに神饌(しんせん)をお供えしますが、
これを行いません。
理由は、御富伎玉をかけたり、散供をするからです。
神饌とは、神様へのお供え物。
米、酒、餅、魚、野菜、果物、塩、水などが一般です。
巽に向かい微音で祝詞を奏上
地鎮祭では、東か南に向けて祭壇を組み、神主は祭壇に向かって、すなわち西か北に向かって祝詞を奏上します。
しかし、竣工祭では巽、南東の方角にむかって祝詞を奏上します。
これは、古くより巽の方角を重視したためだといわれています。
微音で奏上とは、ごく小さな声で祝詞を奏上することです。
一般には、参列の方にもよく聞こえる程度の大きさで奏上されます。
理由は、明らかではありませんが、伊勢神宮などでは、どの神事でも、祝詞は微音で奏上されます。
おそらく元来、祝詞は微音で奏上するものであったと思われます。
ですが、一般の参拝者のお祓い、例えばお宮参りや厄除祈願などの場合、しっかりと神様にお伝えしていることを参拝者にも伝わるように、より大きな声で奏上するようになったと思われます。
神主さんによっては、一般の参拝者の祈願の際にも微音で奏上される方もいらっしゃいます。
式次第
まずは、古儀に則った次第を記します。
・修祓(しゅばつ) =お清め
・建物の四隅に御富伎玉をかける
・建物の四隅に散供
・祝詞奏上
・玉串拝礼 =参拝
次に、神籬を設け、御富伎玉を用いず、神饌を献じる場合の次第を記します。
・修祓(しゅばつ) =お清め
・降神(こうしん) =神様をお招きします
・献饌(けんせん) =お供え物を捧げます
・祝詞奏上
・四方祓い =建物をお清めします
*建物の四隅に紙垂をつけた榊を立てかける
*建物の四隅に散供、祓いをする
・玉串拝礼 =参拝
・徹饌(てっせん) =お供え物を下げます
・昇神(しょうしん)=お招きした神様にお帰りいただきます
・直会(なおらい) =お供えしたお酒などを人間のいただきます
建物の清祓い(お祓い)の際には、建物の四隅に紙垂をつけた榊を立てかけて、散供し、お祓いします。
竣工祭をしない場合は、この清祓いだけをすることもあるので、御富伎玉を省略し、四方祓いを取り入れたものです。
その他にも、式次第は考えられます。
一つの例として参考にしてください。
意義
神様にしっかりと感謝をつたえ、これからお守りいただくことを祈願し、
思いを新たにします。
神様の存在を近くに感じることができ、その恩恵に気付かされます。
また、人の心の中に生まれた思いは、0.2秒ほどで消えて行くそうです。
将来への決心や、周囲への感謝も、こんなに早く消えてしまっては、
自分が思い描いている結果が出るわけがないですね。
いい思いが心の中に生まれたら、しっかりと行動にうつして
消えないものとし、自分が思い描く将来を実現していく。
神事というのは、幸せに生きていくための、古くから伝わる知恵の一つです。
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