嘆きつつひとりぬる夜の明くるまはいかに久しきものとかは知る

百人一首

嘆(なげ)きつつ ひとりぬる夜の 明(あ)くるまは いかに久しき ものとかは知る
右大将道綱母(うだいしょうみちつなのはは)

百人一首の53番目の歌です。

語句

*嘆きつつ・・・「つつ」は動作や作用の反復(繰り返し)を表す接続助詞。
「~ながら」の意味。
何度も嘆いてため息をつく様子を表す。
*ひとり寝る夜・・・「寝(ぬ)る」は動詞「寝(ぬ)」の連体形。
平安時代は男性が女性の家に通う、「通い婚」が慣習であった。「ひとり寝る夜」というのは、夫の来訪がなく女性が孤独に寝る夜のこと。
*明くるまは・・・「夜が明けるまでの間は」の意。
「孤独な夜が長く感じる」という恋愛歌の表現。
*いかに久しきものとかは知る・・・「いかに」は、程度を尋ねる疑問の副詞。「どれくらい」の意。
「かは」は反語を表す複合の係助詞。連体形の動詞「知る」と係り結び。
「かは知る」で、「ご存じですか」の意。
全体で「どんなに長いものか知っておられるでしょうか?」の意。

歌意

あなたが来てくださらないことを嘆き哀しみながら、一人で孤独に寝ている夜が明けるまでの時間がどれだけ長いかご存じでしょうか。あなたはご存じないでしょうね。

作者

右大将道綱母(うだいしょうみちつなのはは)
937~995
平安時代中期の歌人。
陸奥守、藤原倫寧(ふじわらのともやす)の娘。
本朝三美人に選ばれるほどの美貌で、天暦(てんりゃく)8(954)年に摂政関白となる藤原兼家の第2夫人となり藤原道綱を産む。
兼家は浮気性であり、幸せな時は短かった。
半生を綴った「蜻蛉(かげろう)日記」が有名。

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