朝ぼらけ有明の月と見るまでに吉野の里に降れる白雪

百人一首

朝ぼらけ 有明(ありあけ)の月と 見るまでに 吉野の里に 降(ふ)れる白雪(しらゆき)
坂上是則(さかのうえのこれのり)

百人一首の31番目の歌です。

語句

*朝ぼらけ・・・夜が明けてきて、うっすらとあたりが明るくなり、物の輪郭などがほのかに見えるようになってくる頃。多く秋や冬に使う。春はアケボノという。
*有明の月・・・夜明けの空に残り、明るく光っている月のこと。
*みるまでに・・・「みる」は、「見る」ではなく、「思う」や「判断する」の意。
「まで」は程度を表す副助詞、「思うほどに」の意。
*吉野の里・・・大和国(現在の奈良県吉野郡)吉野の一帯。
平安時代には、春は桜、冬は雪の名所として有名であった。
「里」は、人の住めない「山」や「野」に対して、人家の集落をなしている場所。
育ち、生活し、生存する本拠となる所。
転じて、宮仕えの人や養子・養女・嫁・奉公人などから見て、自分の生まれ育った家のこと。
*降れる白雪・・・「降れ」は、「降る」の已然形、「る」は、継続を示す助動詞「り」の連体形で、「雪が降り続いている」の意。体言止め。

歌意

夜がほんのりと明けて、物がほのかに見える頃、有明の月かと思うほど明るく、吉野の里に降った白雪である。

作者

坂上是則(さかのうえのこれのり)
生没年未詳。
征夷大将軍・坂上田村麻呂(さかのうえのたむらまろ)(758~811)の子孫。
大和権少掾(やまとのごんのしょうじょう)などを経て、従五位下・加賀介(かがのすけ)に出世した。三十六歌仙の一人。

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